全国社研社

 1960年代前半に出版活動を開始し、労働者、勤労者の立場に立った出版物の普及に取り組んできました。

『林紘義遺稿集第一巻』発刊

林紘義遺稿集第一巻発刊

先見性と理論的な深さに感銘を受ける

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 林紘義・労働者党元代表が亡くなったのは、2021年2月10日であった。その後、遺稿集発刊の計画が立てられたが、『海つばめ』や『プロメテウス』の編集・発行に追われてしまった。今、ようやく遺稿集第一巻を世に出すことができる。

(4月20日発行 定価 本体2千円+税 全国社研社刊)

◇安保闘争の挫折から起つ

 林さんが東大に入学した当時は、60年安保条約の改定が強行されようとしていた前夜であった。林さんは入学後、激動する政治情勢から学び、社共に代わる労働者の政党をめざして結成されたブント(共産主義者同盟)に加入して活動を開始し、また、大学の自治会役員や東京都学連執行委員・副委員長として安保闘争の先頭に立った。

 しかし、安保闘争を「革命」に転化せよと叫んだ新左翼やブントの指導部は安保闘争の挫折の中で混乱を極め、ブントの指導部は革共同(トロツキー主義の政治組織)に乗り移り、ブントは崩壊した。林さんは新左翼やブントの小ブルジョアの思想と決別し、新たな政治組織の結成に向かって歩み始めた。

 本書には、この模索の時代に書かれた5本の論文と林さんが主筆した「全国社会科学研究会」の大会決議(ソ連や中国を国家資本主義と規定)や大会報告も載っている。以下、5本の論文について簡単に紹介する。

◇安保闘争の総括

 最初の論文は、東大の同級生であり、ブントで共に活動し60年6月にデモ中に警察の暴虐で亡くなった樺美智子さんを追悼した論文、「60年安保闘争と同志樺の死の二周年にあたって」である。

 この論文は、樺さんを追悼しながらも、60年安保闘争の「意義や総括」をまとめたものであり、安保改定という「一つの改良闘争」を革命化しようとしたブントや新左翼の思想的限界を明らかにした無二の論文であった。

 と同時に、樺さんや林さんたちが悩みながら必死に闘った姿を彷彿とさせるリアルな文書であり、読者を感動させる。

◇絶望的闘いを強いた急進主義

 2つ目は、大正鉱業(炭鉱企業)の合理化攻撃と闘う労働者を谷川雁らが指導し、その急進主義と思想的堕落ゆえに敗北と絶望に追いやった労働運動を詳しく総括した論文、「大正行動隊の闘い」である。

 当時、エネルギー資源が石炭から石油へと変わり、安い石油が輸入されていた。当然、石炭産業は危機になる。この危機を克服するために資本は労働者を削減し、賃下げを行うなどの猛烈なしわ寄せを行い始めた。だが労働者の政党は未熟であった。これが当時、急進主義が跋扈した背景である。

 大正鉱業の労働者を指導した「大正行動隊=共産主義同志会」は、「合理化絶対反対」、「プロレタリア革命へ」「死んでも闘う」という出口無き闘いを労働者に強いた。だが闘いが行き詰まり、首切りが避けられないことが分かるや、今度は何の反省もなしに「退職金闘争」に鞍替えした。

 今までの方針を180度転換したことに対して、「大正行動隊」は、全員でヤマから飛び出せば資本家が困ると言い、自分達はヤマに残る程の「腰抜けではない」と、ヤマに残った労働者に対して〝優越〟を誇示した。

 このように、急進主義者が労働者を「絶望」に追いやり「団結」を解体したことを克明に批判している。

◇資本主義論の歪曲との闘い

 3つ目は、「無概念で、無内容なスターリンの最大限利潤論」である。学生時代から林さんは活動の合間をぬって『資本論』やマルクス主義を学び、スターリンをはじめ共産党系学者や宇野弘藏らの労働価値説歪曲と徹底して闘ってきた。本論文はその一つである。

 スターリンは、価値法則は商品生産の法則であるとしても資本主義の法則ではない、かつ自由資本主義の「平均利潤」は独占資本主義では「最大限利潤」に変わると言う。

 だが林さんは、具体的な条件の下で起きる独占利潤の形成という現象をスターリンが「最大限利潤」という言葉で表現したものに過ぎないと断言。

 林さんは独占資本主義でも生産の無政府性と競争を排除せず「平均利潤」を形成する法則が貫かれると述べ、スターリンの「最大限利潤」という法則は成立し得ないことを論証している。

◇レーニンの歴史的評価

 4つ目の論文は、レーニン生誕100周年を記念して刊行された『レーニンの今日的意味』の中にある一論文、「革命家・思想家・人間としてのレーニン」である。この論文はレーニンの少年時代からロシア革命を成し遂げるまでの生涯と「レーニン主義」を歴史的に総括したものである。

 当時のロシアは、海外資本が移入され資本主義が勃興し始め、労働者の闘いも生まれていたが、専制君主が支配する体制下にあった。しかも、「農村共同体」が広く残り、小農民が圧倒的多数を占める国家であった。

 それゆえ、封建体制を打破することでは一致するが、ロシアは商品経済や資本主義を経ずして、「農村共同体」を土台に社会主義に移ることができるという革命家(ナロードニキ)や大多数の農民を無視し抽象的に「プロレタリア革命」を唱えたトロツキーらがいた。

 これに対してレーニンは、来るべきロシア革命を客観的歴史的に見れば、封建的体制を打破する「ブルジョア的革命」であるが、労働者と農民が率先して闘い、自らの共同した利益を守る政治権力の樹立をめざすべきだとした。

 こうしたロシア革命を巡るレーニンの思想と闘いが詳しく論じられ、また、革命後の混乱(「戦時共産主義」に対する農民らの反乱)が何を意味するのかについても詳しく触れられ、非常に分かり易く展開されている。

◇観念的な「永続革命論」を批判

 5つ目は、トロツキーの観念的で空想的な「永続革命論」や「世界同時革命論」に対するマルクス主義からの批判書、「ロマン主義のマルクス主義的表現」である――本論文は、今では絶版になっている『科学的共産主義研究』第28号からの再掲である。

 トロツキーは、「政治力学」でロシア革命とその後の社会建設を論じ、「プロレタリアート」が権力を樹立し、「永続革命」を進めていくなら民主主義から社会主義に成長転化できると考えた。

 だがトロツキーは自身の「永続革命」論が農民を無視した抽象であり現実と矛盾していることに、薄々気付いており、その矛盾を誤魔化すために、「世界同時革命」を打ち出した。トロツキーはロシアの来るべき社会主義革命はヨーロッパの革命によってはじめて成功すると言い、他国の革命の待機主義者になった。

 これらを労働者が支持できないのは明らかだろう。本書の出版を機会に林さんのトロツキー批判の神髄に触れて頂きたい。

 林遺稿集は、労働者が労働運動や改良闘争をどのように闘ってはならないか、またどのように「労働の解放」を目差して闘うべきかを明示している。ぜひ多くの皆さんが本書を読まれ、学ばれることを心より願うものである(W)


『海つばめ』1473号(2024年4月28日発行)での紹介記事に一部加筆

『プロメテウス』62号発刊 特集は《中国・ロシアの真実》

労働者党理論誌『プロメテウス』62号発刊 


《中国・ロシアの真実を特集》

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 今号も〝難産〟だった。特集以外の論文は7月頃には出来上がっていたのだが、中国とロシアに関する論文がなかなかまとまらなかったことが主な原因である。テーマが難しいとか時間がないということは、言い訳にならない。反省すべき点は多々あり、今後改善していかなければならない。ともあれ、何とか年内に発行できたことで、ご容赦願いたい。

 ロシアの侵攻に対するウクライナの反撃が膠着状態に陥っている中で、突如勃発したハマスとイスラエルの武力衝突は世界を震撼させた。テレビニュースは連日、イスラエル軍の容赦ない攻撃にさらされて苦しむガザ地区住民の姿を映し出している。帝国主義は必ずしも大国の〝専売特許〟ではないのだ。

イスラエルは米国の支援の下に軍事力を強化し、ミニ帝国主義国家に転化した。資本主義は、〝自由〟資本主義も国家資本主義も、行き着くところは、他民族を抑圧し殺害して恥じない帝国主義であることをまざまざと示している。帝国主義、その根底にある資本主義とのラジカルな(根源的な)闘いなしには、いくらかでも安定した平和も繁栄もあり得ないことを現実が示している。
 

そんな時代に、未だに中国を〝社会主義〟だと信じてやまない〝知識人〟やその体制を解明できず決まり文句でお茶を濁している〝前衛〟政党が存在すること自体が不思議である。特集は、中国、ロシアに対する批判的分析であるだけでなく、これらのエセ〝左翼〟勢力に対する徹底した批判である。
 

渡辺論文は、日本もまた帝国主義国家として登場していることを様々な側面から立証し、労働者の闘いの道を示している。是永氏のレポートは、ルポの形を取りながら、外国人労働者を無権利のままえげつなく搾取し、抑圧している日本のブルジョアたち(決して大企業だけではない)を告発している。〝理論誌〟としての本誌としては珍しいスタイルだが、このようなレポートもあって良いと思っている。読者の皆さまのご意見・ご感想をお待ちしています。

次号は、ロシア論文(下)の他に、労働者が直面する重要な諸問題をマルクス主義の観点から解明していきたい。帝国主義との闘いは大きなテーマとなるだろう。本誌が労働者、活動家の研究会で活用されることを願ってやまない。

(S)  ≪編集後記≫より

 

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申し込みは全国社研社でも労働者党でも結構です。

 

プロメテウス62号の定価は
本体1000円、送料200円です。

 

メールでのご注文は

webmaster@wpll-j.org 宛に。

 

郵便振替口座:001206166992 

 

 ISBN978-4-9912618-2-4

 C0431¥1000E

 

発行所:全国社研社

1790074
東京都練馬区春日町1-11-12-409

TEL・FAX 0367952822



 

労働者党HPのプロメテウス62号紹介記事はこちら

特集《激化する帝国主義的対立》『プロメテウス』61号発刊

労働者党理論誌『プロメテウス』61号発刊 


《激化する帝国主義的対立を特集》 purome61

  

ようやく本号の発行にこぎ着けることができた。レーニンは『帝国主義論』を執筆するにあたって数百の単行本、パンフレット、新聞雑誌論文、統計資料を利用したが(その結果は膨大な準備ノートとして残されている)、我々も普段からテーマに沿って情報を収集し、研究を深めていかなければならないと改めて感じた次第である。

特集は当初、米国、中国、日本の帝国主義の現段階をテーマとしてスタートしたが、ロシアのウクライナ侵攻が発生し、急遽、ロシアの分析を入れた。残念ながら、ロシア体制論は時間切れで前半のみの掲載となったが、次号で完結させたい。ソ連時代の体制については、我々はかつて国家資本主義論の観点から深く研究し、いくつかの文献――本誌広告参照――を刊行してきたが、これらの著作も併せて検討していただければ幸いである。

今号には、新しい執筆者が2人登場している。佐々木氏(ミャンマー問題)と是永氏(リニア新幹線問題)である。佐々木氏は、前号に同じテーマで長大論文を寄せてくれたのだが、長すぎて本誌には入りきらず、今回、要点を絞ってまとめてもらった。また、是永氏は、既に様々な矛盾や弊害を露呈しているリニア新幹線建設の問題点をコンパクトにまとめてくれた。新しい執筆者を迎えることは、編集者としては大変うれしく、心強いことであり、後に続く方を期待している。また、長く労働者党の代表として先頭に立って闘ってきた故林紘義氏の樺美智子さん追悼文は、三一書房の了承を得て掲載することができた。当時の若い自覚した活動家たちの心意気や苦闘を忍ばせ、胸を打つものがある。〝安保世代〟はもちろんのこと、是非若い人々に読んでいただきたい。
 

次号では何を特集とし、何を論じるべきかは、これから検討していく段階だが、積み残しになっている「維新」批判、結成100年を迎えた日本共産党論、経済停滞と〝インフレ〟に呻吟する日本資本主義の分析などがさしあたって考えられる。マルクス主義の観点に立脚した論文の投稿は大いに歓迎する。『プロメテウス』をマルクス主義の理論誌として充実させ、労働者の闘いの武器としていきましょう。(S) ≪編集後記≫より

 

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申し込みは全国社研社でも労働者党でも結構です。

プロメテウス61号の定価は本体800円、送料200円です。

 

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   ISBN978-4-9904618-7-4

   C0433800E

 

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