全国社研社

 1960年代前半に出版活動を開始し、労働者、勤労者の立場に立った出版物の普及に取り組んできました。

『プロメテウス』63号発刊《特集》斎藤幸平〝理論〟を撃つ

労働者党理論誌『プロメテウス』63号発刊 


《特集》斎藤幸平〝理論〟を撃つ

 昨年末に本誌62号を発行したのち、2024年は年二回発行を目指して取り組んできたが、63号発行は10月末にずれ込んでしまった。最初の原稿提出以来、刊行までにおよそ4ヵ月を要したのは、論文をより十全なものに仕上げようという執筆者と編集者、校正担当者などの努力の結果である。「海つばめ」への執筆や『資本論』学習会の開催、集会へのビラ配布など、日常活動に奮闘してきた中での刊行ということで、ご理解を賜りたい。
purome63
 東大大学院総合文化研究科准教授、博士(哲学)という大層な肩書きを持つ斎藤幸平氏は最近、著作を相次いで公刊し、テレビにも度々登場するなど、若手の“マルクス学者”としてもてはやされている。しかし、彼の著作を子細に検討すると、マルクスの見解を歪め、手前勝手に解釈して――改良の積み重ねによって未来社会が実現できるかに説く――自説を権威づけようとしていることがすぐ分かるのだが、おかしなことに、我々の知る限り、誰も彼の“〝理論〟を真正面から批判しようとしていない。

 新奇な〝学説〟に――資本主義の延命につながる説であるが故に安心して――すぐ飛びつくマスメディアの風潮はいつものことだ。しかし、マルクス主義を活動の根底に据え、活動を導く羅針盤ともしてきた労働者党と労働者活動家にとって、彼の〝理論〟は決して見逃せない。我々は既に、本誌60号(2021年10月発行)で斎藤著『人新生の「資本論」』におけるマルクスの未来社会論の歪曲を批判したが、昨年10月に『マルクス解体』が発行されたのを契機に斉藤〝理論〟の根本的な批判を展開することにした。その努力の結晶が本号の特集である。
 

第一論文(田口氏執筆)は、斎藤の「『脱成長コミュニズム』論批判――マルクスの未来社会論を否定する『環境社会主義』」のタイトルの下に、斎藤の試みを詳細に批判している。第二論文、「労働価値説を改変して『マルクス解体』――資本主義の擁護に帰着した『脱成長』論」(渡辺氏執筆)は、田口論文とはまた少し違った視点から斎藤〝理論〟に挑んでいる。特集の二つの論文を読まれた方は、斎藤氏の貧弱で〝夢のない〟未来社会に比べて、『資本論』などで描出されたマルクスの未来社会が実に豊かで発展的な内容を持ち、労働者に希望と夢を与え、闘いの意欲を呼び覚ますものであることを知るだろう。そのことを感じとっていただければ、特集の意義はあったというものである。

purome63index

 特集の他、古川論文は、日本資本主義の〝希望の星〟(?)トヨタの徹底した労働者搾取・下請け企業収奪の本性を容赦なく暴き出した力作である。労使交渉での生々しいやり取りといい、豊田章男会長の開き直りの糾弾といい、臨場感がある。本論文をトヨタの、いやトヨタのみならず日本を支配する大企業、その傘下にある中小零細企業の労働者の手元に届けたいものだ。「神奈川労働者くらぶ」通信(月報)から転載させていただいた柄谷行人批判の小論は、小粒でもピリッとした山椒の味わいがある。坂井氏の研究論文は、未来社会における生産と分配をめぐる議論の一助となることを期待して掲載することになった。読者の皆さんからのご意見をお待ちしています。なお、現代ロシア論(下)は次号掲載予定です。

(S)  ≪編集後記≫に加筆

 

申し込みは全国社研社でも労働者党でも結構です。

プロメテウス63号の定価は本体1000円+税です。

purome63back
 

メールでのご注文は webmaster@wpll-j.org 宛に。

郵便振替口座:001206166992 

 ISBN978-4-9912618-2-4

 C0431¥1000E

 

発行所:全国社研社

1790074
東京都練馬区春日町1-11-12-409

TEL・FAX 0367952822

 

労働者党HPのプロメテウス63号紹介記事はこちら

『林紘義遺稿集第一巻』発刊

林紘義遺稿集第一巻発刊

先見性と理論的な深さに感銘を受ける

 ikousyu1cober

 林紘義・労働者党元代表が亡くなったのは、2021年2月10日であった。その後、遺稿集発刊の計画が立てられたが、『海つばめ』や『プロメテウス』の編集・発行に追われてしまった。今、ようやく遺稿集第一巻を世に出すことができる。

(4月20日発行 定価 本体2千円+税 全国社研社刊)

◇安保闘争の挫折から起つ

 林さんが東大に入学した当時は、60年安保条約の改定が強行されようとしていた前夜であった。林さんは入学後、激動する政治情勢から学び、社共に代わる労働者の政党をめざして結成されたブント(共産主義者同盟)に加入して活動を開始し、また、大学の自治会役員や東京都学連執行委員・副委員長として安保闘争の先頭に立った。

 しかし、安保闘争を「革命」に転化せよと叫んだ新左翼やブントの指導部は安保闘争の挫折の中で混乱を極め、ブントの指導部は革共同(トロツキー主義の政治組織)に乗り移り、ブントは崩壊した。林さんは新左翼やブントの小ブルジョアの思想と決別し、新たな政治組織の結成に向かって歩み始めた。

 本書には、この模索の時代に書かれた5本の論文と林さんが主筆した「全国社会科学研究会」の大会決議(ソ連や中国を国家資本主義と規定)や大会報告も載っている。以下、5本の論文について簡単に紹介する。

◇安保闘争の総括

 最初の論文は、東大の同級生であり、ブントで共に活動し60年6月にデモ中に警察の暴虐で亡くなった樺美智子さんを追悼した論文、「60年安保闘争と同志樺の死の二周年にあたって」である。

 この論文は、樺さんを追悼しながらも、60年安保闘争の「意義や総括」をまとめたものであり、安保改定という「一つの改良闘争」を革命化しようとしたブントや新左翼の思想的限界を明らかにした無二の論文であった。

 と同時に、樺さんや林さんたちが悩みながら必死に闘った姿を彷彿とさせるリアルな文書であり、読者を感動させる。

◇絶望的闘いを強いた急進主義

 2つ目は、大正鉱業(炭鉱企業)の合理化攻撃と闘う労働者を谷川雁らが指導し、その急進主義と思想的堕落ゆえに敗北と絶望に追いやった労働運動を詳しく総括した論文、「大正行動隊の闘い」である。

 当時、エネルギー資源が石炭から石油へと変わり、安い石油が輸入されていた。当然、石炭産業は危機になる。この危機を克服するために資本は労働者を削減し、賃下げを行うなどの猛烈なしわ寄せを行い始めた。だが労働者の政党は未熟であった。これが当時、急進主義が跋扈した背景である。

 大正鉱業の労働者を指導した「大正行動隊=共産主義同志会」は、「合理化絶対反対」、「プロレタリア革命へ」「死んでも闘う」という出口無き闘いを労働者に強いた。だが闘いが行き詰まり、首切りが避けられないことが分かるや、今度は何の反省もなしに「退職金闘争」に鞍替えした。

 今までの方針を180度転換したことに対して、「大正行動隊」は、全員でヤマから飛び出せば資本家が困ると言い、自分達はヤマに残る程の「腰抜けではない」と、ヤマに残った労働者に対して〝優越〟を誇示した。

 このように、急進主義者が労働者を「絶望」に追いやり「団結」を解体したことを克明に批判している。

◇資本主義論の歪曲との闘い

 3つ目は、「無概念で、無内容なスターリンの最大限利潤論」である。学生時代から林さんは活動の合間をぬって『資本論』やマルクス主義を学び、スターリンをはじめ共産党系学者や宇野弘藏らの労働価値説歪曲と徹底して闘ってきた。本論文はその一つである。

 スターリンは、価値法則は商品生産の法則であるとしても資本主義の法則ではない、かつ自由資本主義の「平均利潤」は独占資本主義では「最大限利潤」に変わると言う。

 だが林さんは、具体的な条件の下で起きる独占利潤の形成という現象をスターリンが「最大限利潤」という言葉で表現したものに過ぎないと断言。

 林さんは独占資本主義でも生産の無政府性と競争を排除せず「平均利潤」を形成する法則が貫かれると述べ、スターリンの「最大限利潤」という法則は成立し得ないことを論証している。

◇レーニンの歴史的評価

 4つ目の論文は、レーニン生誕100周年を記念して刊行された『レーニンの今日的意味』の中にある一論文、「革命家・思想家・人間としてのレーニン」である。この論文はレーニンの少年時代からロシア革命を成し遂げるまでの生涯と「レーニン主義」を歴史的に総括したものである。

 当時のロシアは、海外資本が移入され資本主義が勃興し始め、労働者の闘いも生まれていたが、専制君主が支配する体制下にあった。しかも、「農村共同体」が広く残り、小農民が圧倒的多数を占める国家であった。

 それゆえ、封建体制を打破することでは一致するが、ロシアは商品経済や資本主義を経ずして、「農村共同体」を土台に社会主義に移ることができるという革命家(ナロードニキ)や大多数の農民を無視し抽象的に「プロレタリア革命」を唱えたトロツキーらがいた。

 これに対してレーニンは、来るべきロシア革命を客観的歴史的に見れば、封建的体制を打破する「ブルジョア的革命」であるが、労働者と農民が率先して闘い、自らの共同した利益を守る政治権力の樹立をめざすべきだとした。

 こうしたロシア革命を巡るレーニンの思想と闘いが詳しく論じられ、また、革命後の混乱(「戦時共産主義」に対する農民らの反乱)が何を意味するのかについても詳しく触れられ、非常に分かり易く展開されている。

◇観念的な「永続革命論」を批判

 5つ目は、トロツキーの観念的で空想的な「永続革命論」や「世界同時革命論」に対するマルクス主義からの批判書、「ロマン主義のマルクス主義的表現」である――本論文は、今では絶版になっている『科学的共産主義研究』第28号からの再掲である。

 トロツキーは、「政治力学」でロシア革命とその後の社会建設を論じ、「プロレタリアート」が権力を樹立し、「永続革命」を進めていくなら民主主義から社会主義に成長転化できると考えた。

 だがトロツキーは自身の「永続革命」論が農民を無視した抽象であり現実と矛盾していることに、薄々気付いており、その矛盾を誤魔化すために、「世界同時革命」を打ち出した。トロツキーはロシアの来るべき社会主義革命はヨーロッパの革命によってはじめて成功すると言い、他国の革命の待機主義者になった。

 これらを労働者が支持できないのは明らかだろう。本書の出版を機会に林さんのトロツキー批判の神髄に触れて頂きたい。

 林遺稿集は、労働者が労働運動や改良闘争をどのように闘ってはならないか、またどのように「労働の解放」を目差して闘うべきかを明示している。ぜひ多くの皆さんが本書を読まれ、学ばれることを心より願うものである(W)


『海つばめ』1473号(2024年4月28日発行)での紹介記事に一部加筆

『プロメテウス』62号発刊 特集は《中国・ロシアの真実》

労働者党理論誌『プロメテウス』62号発刊 


《中国・ロシアの真実を特集》

purome62

 今号も〝難産〟だった。特集以外の論文は7月頃には出来上がっていたのだが、中国とロシアに関する論文がなかなかまとまらなかったことが主な原因である。テーマが難しいとか時間がないということは、言い訳にならない。反省すべき点は多々あり、今後改善していかなければならない。ともあれ、何とか年内に発行できたことで、ご容赦願いたい。

 ロシアの侵攻に対するウクライナの反撃が膠着状態に陥っている中で、突如勃発したハマスとイスラエルの武力衝突は世界を震撼させた。テレビニュースは連日、イスラエル軍の容赦ない攻撃にさらされて苦しむガザ地区住民の姿を映し出している。帝国主義は必ずしも大国の〝専売特許〟ではないのだ。

イスラエルは米国の支援の下に軍事力を強化し、ミニ帝国主義国家に転化した。資本主義は、〝自由〟資本主義も国家資本主義も、行き着くところは、他民族を抑圧し殺害して恥じない帝国主義であることをまざまざと示している。帝国主義、その根底にある資本主義とのラジカルな(根源的な)闘いなしには、いくらかでも安定した平和も繁栄もあり得ないことを現実が示している。
 

そんな時代に、未だに中国を〝社会主義〟だと信じてやまない〝知識人〟やその体制を解明できず決まり文句でお茶を濁している〝前衛〟政党が存在すること自体が不思議である。特集は、中国、ロシアに対する批判的分析であるだけでなく、これらのエセ〝左翼〟勢力に対する徹底した批判である。
 

渡辺論文は、日本もまた帝国主義国家として登場していることを様々な側面から立証し、労働者の闘いの道を示している。是永氏のレポートは、ルポの形を取りながら、外国人労働者を無権利のままえげつなく搾取し、抑圧している日本のブルジョアたち(決して大企業だけではない)を告発している。〝理論誌〟としての本誌としては珍しいスタイルだが、このようなレポートもあって良いと思っている。読者の皆さまのご意見・ご感想をお待ちしています。

次号は、ロシア論文(下)の他に、労働者が直面する重要な諸問題をマルクス主義の観点から解明していきたい。帝国主義との闘いは大きなテーマとなるだろう。本誌が労働者、活動家の研究会で活用されることを願ってやまない。

(S)  ≪編集後記≫より

 

purome62back

申し込みは全国社研社でも労働者党でも結構です。

 

プロメテウス62号の定価は
本体1000円、送料200円です。

 

メールでのご注文は

webmaster@wpll-j.org 宛に。

 

郵便振替口座:001206166992 

 

 ISBN978-4-9912618-2-4

 C0431¥1000E

 

発行所:全国社研社

1790074
東京都練馬区春日町1-11-12-409

TEL・FAX 0367952822



 

労働者党HPのプロメテウス62号紹介記事はこちら

ギャラリー
  • 『プロメテウス』63号発刊《特集》斎藤幸平〝理論〟を撃つ
  • 『プロメテウス』63号発刊《特集》斎藤幸平〝理論〟を撃つ
  • 『プロメテウス』63号発刊《特集》斎藤幸平〝理論〟を撃つ
  • 『林紘義遺稿集第一巻』発刊
  • 『プロメテウス』62号発刊 特集は《中国・ロシアの真実》
  • 『プロメテウス』62号発刊 特集は《中国・ロシアの真実》
  • 特集《激化する帝国主義的対立》『プロメテウス』61号発刊
  • 特集《激化する帝国主義的対立》『プロメテウス』61号発刊
  • 《気候変動と労働者の立場》『プロメテウス』60号発刊
  • 《気候変動と労働者の立場》『プロメテウス』60号発刊
  • 種は蒔かれた――労働者党の2019参院選闘争の記録
  • 《MMT派経済学批判を特集》『プロメテウス』59号発刊
  • 《MMT派経済学批判を特集》『プロメテウス』59号発刊
  • いかなる観点で『資本論』学習会を組織するかの指針
  • 小パンフ⑤ 労働者党の憲法(憲法第1章「天皇」条項)改訂試案